離婚や夫婦関係のこと、それに付随するお金のことなどについて、法律の専門家に相談したい。

 

パートナーとの関係性が悪化してくると、このように法律的なアドバイスを専門家に求めたくなることはよくあることです。

 

しかし、多くの人が「でもお金がかかる…」と躊躇してしまうのも事実。

 

お金が原因で適切な法的サービスを受けられないというのは、サービスを提供する側にとっても悲しいことです。

 

それを解決してくれるのが「法テラス」の弁護士費用立て替え制度。

 

単純な「弁護士費用の分割払い」とは仕組みが異なります。

「法テラス」の制度について、どんな人が利用できるのか、利用の流れはどのようになるのか、見ていきましょう。

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法テラスとは

 

「法テラス」は正式名称を「日本司法支援センター」と言います。

 

  • 心に光を「照らす」
  • 悩みを持った人々がくつろげるような「テラス」

 

この2つの意味が込められています。

 

日本全国、どんな人にも適切な法的サービスを提供できる環境づくりに尽力している団体で、各都道府県に支部が設置されています。

 

法テラスで何ができるの?

 

法テラスでは、相談料を法テラスが出してくれる

「無料法律相談」 という制度と、

実際に弁護士に依頼するときの費用を立て替えてくれる「弁護士費用立替」の制度があります。

 

「無料法律相談」は読んで字のごとく無料で相談が受けられる制度。

 

同じ内容の相談であれば3回までは無料で相談をすることができます。

 

「弁護士費用の立て替え」は、

弁護士費用を一括で払えない人の代わりに法テラスが立て替えて弁護士に払ってくれる、

という制度で、依頼者はその後法テラスへ月々無理のない範囲で返済していくことになります。

 

利用条件

 

誰でも彼でも法テラスを利用できるわけではなく、利用するためには法テラスの定める基準を満たしている必要があります。

 

法テラスの定める基準は下記の3つ。

 

1.資力基準を満たしている

2.紛争解決の見込みがないとは言えないこと

3.民事法律扶助の趣旨に適すること (報復的感情を満たしたり、宣伝のためだったり、という訴訟などの場合はダメ)

 

「無料法律相談」は1と3を満たしていることが必要で、「弁護士費用立替制度」は3つ全てを満たしている必要があります。

 

難しい言い方をしていますが、通常の離婚訴訟などの場合、よほど特殊な場合を除き、2と3は満たしていることがほとんどです。

一番ポイントとなってくるのは1の「資力基準」です。

 

資力基準

 

法テラスの定める「資力基準」には

 

  • 毎月の収入についての基準
  • 保有している資産についての基準

 

の2つの基準があります。

 

1.収入の基準

 

法テラスを利用するためには、収入が法テラスの定めている基準以下であることが必要です。

 

その基準は基本的に「夫婦の収入を合算した金額」で計算されますが、離婚など、配偶者を相手とする事件の場合は自分ひとりの収入が基準となります。

 

そのため、「専業主婦で自分自身はお金がないが、夫が高給取りなので基準を満たさない…」と心配する必要はありません。

 

家族人数 が1人の場合:182,000円以下

 

2人:251,000円以下

3人:272,000円以下

4人:299,000円以下

 

※東京・大阪などの大都市圏に居住している場合、基準額はやや上がります。

 

また、家賃や住宅ローンを支払っている場合、家族人数によって41,000円~71,000円が基準額に追加されます。

家賃以外にも定期的に必要な医療費など 「やむを得ない支出」がある場合、考慮されることがある ので、気になる方は法テラスにきいてみましょう。

 

2.資産の基準

 

収入以外に、保有資産についても基準が決められています。

 

夫婦の現金や預貯金、自宅などを除く保有不動産、有価証券などの合計額が基準以下であることが必要です。

こちらも収入同様、家族の人数によって基準金額が変わります。

 

具体的には下記のとおり。

 

家族人数 が1人の場合 :180万円以下

 

2人:250万円以下

3人:270万円以下

4人以上:300万円以下

 

利用方法

 

法テラスの利用は「法テラスに登録している弁護士」に依頼する場合に限って利用できます。

 

法テラスに勤務している弁護士はもちろん登録弁護士ですし、別の事務所の弁護士も多くの場合は法テラスに登録しています。

 

具体的に法テラスを利用して相談や依頼を行いたい場合、下記の3つのうちのいずれかの方法をとります。

 

1.個々の弁護士事務所に直接電話をし、「法テラスを利用して相談や依頼を行いたい」と申し出る

2.自分の住んでいる地域の法テラスに電話をして、その地域で法テラス利用可能な弁護士を紹介してもらう

3.自分の住んでいる地域の法テラスに電話をして、 その法テラスに勤務している弁護士に相談する

 

利用基準などはどの方法をとっても変わりません。

 

手続の流れ

 

法テラスの手続の流れは以下のとおりです。

 

1.依頼予定の弁護士を通じて法テラスへ申し込む

 

申し込みに必要な書類はおおむね下記のとおり。

 

  • 住民票
  • 所定の申込書類(援助申込書、資力申告書など)
  • 資力を証明する書類 (給与明細、所得証明 、所有している不動産の評価証明書など)
  • 依頼内容に関する書類 (離婚事件の場合は戸籍謄本など)

 

2.法テラスの審査の上、問題なければ「援助決定」が出る(着手金の額も同時に決定される)

 

3.所定の契約書や引き落としの口座の登録書類などに記入、提出

 

4.弁護士が事件に着手する

※急ぎの案件の場合、弁護士によっては決定が出る前に着手することもあります。

 

着手時期の方針は弁護士によって異なりますので、気になる場合は申込時に確認しておきましょう。

 

5.依頼者は月々の支払を開始する

 

法テラスを利用せず、直接弁護士に分割で費用を払おうとすると、数万円ずつの積み立てとなることが多いのですが、法テラスへの支払は月5,000円程度から設定でき、負担が少ないというのが大きな特徴です。

 

6.事件が終了したら弁護士は法テラスへ「終結報告」をし、それに基づいて報酬金の額が決定される

 

7.依頼者は支払を続ける

 

基本的には「着手金を支払ったあとに報酬金の支払いを開始する」という形なので、報酬金額が決定したからと言って、毎月の支払額が増えるわけではありません。

 

法テラスではまとめ払いや毎月の支払額の増減も対応してくれますから、支払について気になることがあったら法テラスへ連絡してみましょう。

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法テラス利用のメリット

 

1.まとまったお金がなくても弁護士に依頼することができる

 

「お金がないから依頼できない」という、依頼者にとっての一番大きな問題は、法テラスを利用することで解決できます。

それが法テラス利用の何よりも大きなメリットです。

 

2.通常の弁護士費用よりも総額が安くて済む

 

経済的に困窮している人でも法的サービスを利用できるようにすることが法テラスの理念。

そのため、法テラスにおいて決定される着手金や報酬金の額は一般的な弁護士費用と比べると安いことが多いのです。

利用者側にとってはこちらも大きなメリットです。

 

3.法テラス・弁護士・依頼者の3者間契約なので、苦情の申立をしやすい

 

弁護士と自分2者間の契約の場合、弁護士の仕事ぶりに何か疑問があっても、なかなか言い出しにくいですよね。

 

法テラスを利用する場合、契約関係は法テラス・弁護士・依頼者の3者間契約。

弁護士に何か問題が発生した場合、弁護士ではなく法テラスへ苦情を言うことができるので、精神的負担が軽減されます。

 

4.生活保護の受給者であれば、その後の償還が免除されることがある

 

あまり知られていませんが、生活保護の受給者であったり、それ以外でも支払が非常に困難であると法テラスが認めた場合、法テラスへの支払が免除されることがあります。

 

上記のような場合、利用当初から償還免除を受けられる場合もあれば、支払途中に「もう支払うのが無理…」となった時から免除されるということもあるので、一度法テラスへ問い合わせてみると良いでしょう。

 

デメリット

 

法テラスの紹介を受ける場合、自分の希望に合う弁護士を選べない

 

法テラスからの紹介の場合、名簿順に機械的に紹介されることが多いため、希望に合った弁護士に担当してもらえるとは限りません。

 

「この人に相談したい」という弁護士がいるのであれば、法テラスへ問い合わせるのではなく、直接その弁護士事務所へ連絡し「法テラスを利用してそちらに相談に行きたい」と伝える方が良いでしょう。

 

 

まとめ

 

パートナーに収入を依存している主婦・主夫などは、「離婚のために弁護士に依頼したい」と思っても費用面で躊躇してしまうことが多いですよね。

 

法テラスはその不安を払拭してくれる 頼もしい味方なのです。

基準を満たしてさえいれば、「無料法律相談」を3回まで利用できます。

 

離婚に限らず、弁護士を利用するコツは「できるだけ早く相談すること」。

毎日の生活において、一瞬でも「離婚」「弁護士」という言葉が脳裏をよぎったら、まずは一度弁護士へ気軽に相談してみましょう。

 

今後歩むべき進路の道しるべになってくれるはずです。

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