「不貞の子」とは読んで字のごとく「不貞の結果できてしまった子ども」のこと。
生まれてくる子に罪はありませんが、結婚した男女間の子どもと違い、様々な問題が付随してくるというのも事実です。
今回はその「不貞の子」について、
- 既婚女性が夫以外の男性(不貞相手)との間に子どもを作った場合
- 既婚男性が妻以外の女性(不貞相手)との間に子どもを作った場合
について、それぞれどんな問題が発生してくるのか考えてみましょう。
目次
不貞の子に関して発生する問題
不貞の子に関して問題となってくるのは主に
- お金(養育費)の問題
- 戸籍(認知)の問題
の2つです。
養育費とは、その子供を監護・教育するために必要な経費であり、いわゆる「慰謝料」などとは別のもの。
子どもが健全に成長していくためにも、支払い方法や金額について、きちんと決めておく必要があります。
戸籍の問題とは、そもそも「戸籍上その子の父は誰になるのか」という点に争いが起きる場合がある、ということ。
基本的に母親はその子を産んだ時点で戸籍上その子の母となりますが、「戸籍上の父親が誰であるか」ということを明らかにしておかないと、養育費の問題はもちろん、父親の相続問題などが発生した時にも面倒なことになってしまいます。
パターン1:既婚だが夫以外の男性との間に子どもができた
既婚女性に、夫ではない男性との子どもができてしまった場合。
ここでもまずポイントとなるのは「戸籍上子どもの父親が誰になるか」という点です。
1.離婚する場合
1-1.離婚後、交際相手と再婚する場合
「夫との間に愛情はないから、夫と別れて不貞相手と結婚し、その相手との子としてきちんと育てるわ」
そのような覚悟のある方もいるでしょう。
しかし、そのためにはいくつか越えるべきハードルがあります。
まず、民法第722条第2項で、
「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」
と定められています。
簡単に言うと「離婚しても、その後300日以内に生まれた子どもの戸籍上の父親は前夫になる」という規定です。
これを否定するためには家庭裁判所において
- 嫡出否認
- 親子関係不存在
のどちらかの手続を経る必要があります。
「嫡出否認」は、基本的に元夫本人が子どもの出生から1年以内に手続を行う必要があります。
「親子関係不存在」は子ども本人や母親が申し立てることもできますが、
夫が収監中や長期の海外出張だったなど、明らかに夫の子を妊娠する可能性がなかった、などという特殊な例外の場合に限られます。
何らかの手続を検討している場合、できるだけ早い段階で一度弁護士などに相談してみると良いでしょう。
いずれかの方法で元夫との親子関係が否定されたら、新しい夫がその子どもを認知することで、新しい夫と子どもの親子関係がはっきりします。
そして、「認知」と「父母の結婚」の両方の条件が揃うと、その子どもは「嫡出子」として扱われることになります。
1-2.離婚後、交際相手とは結婚せずシングルマザーになる場合
「離婚はする、子どもは産む、でも交際相手とは結婚しない」
このような選択をする可能性もあるでしょう。
その場合、「1-1.離婚後、交際相手と結婚する場合」に記載された親子関係についての手続をひととおり取ったあと、
交際相手に「認知」してもらうよう働きかけた方が良いでしょう。
「認知」とは簡単に言うと「この子は僕の子です」と父親が戸籍上の親子関係を認めること。
認知をしていると、父親は母親との結婚の有無にかかわらず子どもを養育する義務を負います。
つまり、認知をしてもらうことで子どもは父親に養育費を請求できるようになるのです。
結婚する・しないはあなたと交際相手の自由ですが、子どもは健やかに養育される権利がありますから、子どもの将来のことを考えると、結婚はしなくとも認知はしてもらうようにしたいですね。
2.離婚しない場合
不貞の事実を夫が知らない場合、「別の男性の子であることを隠し、そのまま夫の子として育てる」という選択肢がないわけではありません。
しかし、万が一隠していたことが判明した場合、夫から慰謝料などの請求をされる可能性もありますし、子どもの実の父親である男性が何か行動を起こし(子どもを渡せ!などと突然言ってくるなど)、家庭が壊れてしまうという可能性も十分に考えられます。
「夫の子として育てる」という選択は相当リスクが高く、正直なところおすすめはできません。
ちなみに、戸籍上「夫の子」となっているのであれば、実の父親である男性には養育費などの支払い義務は発生せず、請求することはできません。
パターン2:夫の不貞相手が妊娠した
1.離婚する場合
不貞相手が妊娠したということは、夫とその相手の間に不貞行為(性行為)があったということ。
これは民法上の「離婚事由」にあたりますから、妻から離婚を申し出ることができます。
また、夫やその相手に慰謝料の請求もできます。
2.離婚しない場合
2-1.養育費の問題
離婚はしないが、不貞相手が「産む」という選択をした場合、そして夫がその子を認知した場合、夫はその子に養育費を支払う必要があります。
実際に養育費の支払義務があるのは夫ですが、離婚せず家庭生活を続けていくのであれば、必然的に家計からその分を支出することになります。
そうなると妻にも金銭的負担がかかってきますから、無視することはできません。
妻の立場からすると「じゃあ認知なんてしないで!」と思うかもしれませんが、生まれてくる子に罪はなく、その子は健やかに養育される権利があるのですから、夫はやはり認知をし、養育費を支払うべきでしょう。
それが妻として我慢ならないというのであれば、離婚を一つの選択肢として考えましょう。
2-2.相続権の問題
また、離婚せず、夫がその子を認知する、となった場合、もう1つ浮上する問題が「相続権」です。
父親(この場合は夫)が亡くなった場合、妻や妻との間の子だけではなく、不貞相手の子にも相続権が発生します。
【例】
夫に妻および子(嫡出子)が1人いる場合:妻と子がそれぞれ遺産の2分の1ずつを相続する
※上記に加えて「非嫡出子1人」がいる場合:妻の相続分(2分の1)は変わらないが、残りの2分の1を嫡出子と非嫡出子で等分することになるため、妻の子の取り分が半分になる
このように、妻からすると「自分の子がもらえるはずだった財産を、不貞の子に半分持って行かれてしまう!」という状態になってしまいます。
※平成25年までは「非嫡出子の相続分は嫡出子の半分」と定められていましたが、
「生まれてくる子自身が非嫡出子であることを選んだわけではないのに不公平である」とのことで、
嫡出子と非嫡出子の相続分が同等になりました。
※不貞相手は「配偶者」ではないので相続権はありません
一番に考えたいのは子どもの未来
「不貞の子」という言葉は不穏な響きですし、どの立場になってもうろたえ、問題点ばかりが浮き彫りになるということも多いでしょう。
妊娠が発覚したら、もしくは出産したら、養育費やら戸籍のことなど、多くの問題が発生し、次から次へと発生する問題から逃げ出したくなることもあるかもしれませんね。
しかし、それは不貞を働いた大人たちの罪であって、生まれてくる子どもに罪はありません。
どのような対応をするにせよ、「子どもにとって一番いいのはどういう対応か」ということを念頭に置いて行動したいですね。