養育費を支払わない離婚者たち
養育費とは、成人していない子供が自立するまでの期間、両親が離婚をしても日常生活を脅かされることなく過ごせるようにするために、親権を得なかった親が支払う費用のことです。
この養育費が現在、あまり支払われていないのが問題となっています。
養育費は本来、親と同じだけの生活基準を満たす生活を送れるように支払わなければならない
「生活保持義務」というものにあたり、自身は生活水準を落としてでも支払わなければならないという強い義務です。
にもかかわらず、厚生労働省の調査によると
平成18年時点で、
- 「養育費を受けたことがない」59.1%
- 「受けたことがある」(継続して受け取ってはいない)16.0%
- 「現在も養育費を受けている」19.0%
と、かなり多くの養育費が未払いになっていることが分かります。
養育費は離婚相手に支払う金銭というイメージが強いかもしれませんが、本来子供の権利です。
この認識が薄すぎるのが大元の原因かもしれませんが、支払ってもらえないと子供の生活、成長に大きな支障をきたしかねません。
事前にしっかりと話し合って取り決めておいたにも関わらず相手が養育費を支払わないと言い出した時、いったいどうすれば養育費を支払ってもらえるのでしょうか?
今回は養育費の請求、そして養育費の支払い拒否について見ていきましょう。
養育費をなんとか支払わせたい!
どうしても養育費を取り逃したくなければ、まずは離婚を切り出したり、別居する以前から準備しなければなりません。
離婚公正証書を作成しておけば、法的に確実に、支払い義務者の給料を差し押さえてでも支払ってもらうことができます。
しかし今回は事前に公正証書を作成していなかった場合にどうやって支払わせるかに焦点を当ててみましょう。
離婚後に滞納している養育費を請求するために話し合いを試みても、離れて暮らしている相手と連絡を取ること自体が困難な場合は少なくありません。
こういった場合には養育費請求調停を起こすことになります。
養育費請求調停には様々な書類や費用、そして調停に出席するための時間が必要となるので、事前に下調べをしておくことが重要です。
出席が難しい場合には弁護士に依頼して代理で出席してもらうことも可能ですが、できれば本人も出席しておくと調停員からの印象が良くなるでしょう。
弁護士に頼らず自力で調停を起こしたい方のために、大まかに必要書類や調停の流れをまとめておきます。
必要書類
- 養育費請求調停申立書、その写し1通
裁判所のホームページに記入例と共に、手続きの概要や申し立ての方法が載っています。
一度目を通しておきましょう。
裁判所トップページ – 裁判手続の案内 – 家事調停の申立書 – 養育費請求調停の申立書
- 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- 申立人の戸籍謄本
- 元パートナーの戸籍謄本
- 申立人の収入に関する資料
源泉徴収票の写しや給与明細の写し、確定申告書の写し、非課税証明書の写し等です。
これが無ければ説得力に欠けてしまい調停員から信用が得られない可能性があります。
- 事情説明書
養育費の支払いに関する現状や、生活状況などを説明した書類です。
こちらも裁判所のホームページに説明や記入例と共に載っています。
裁判所トップページ – 各地の裁判所 – 東京家庭裁判所 – 裁判手続を利用する方へ – 手続案内 – 家事調停の申立て
- 連絡先等の届出書
- 進行に関する照会回答書
裁判所からの簡単な質問に答える用紙です。
6と同じ箇所に載っています。
- 裁判所から請求された場合には元パートナーの年収を証明するもの
もしも押さえられるなら離婚前から押さえておきましょう。
必要な費用
- 収入印紙 子供1人につき1200円分
- 連絡用の郵便切手 800円前後
各家庭裁判所によって異なるようですが800円前後になります。
養育費請求調停の流れ
- 相手方の住所地の家庭裁判所へ養育費請求調停の申立書を提出
- 調停期日が決定し、調停期日呼出状が届く
- 第1回調停
- 以下月に1回程度のペースで終了まで続行。
成立の場合は強制執行、差し押さえが可能になります。
不成立の場合は審判へと自動的に移行し、裁判官が両者の事情をもとに判断して決定します。
ここで認められても強制執行が可能です。
以上が養育費請求調停のまとめとなります。
よくわからない場合には弁護士に依頼までいかなくとも相談だけでもしてみると良いでしょう。
また、無料相談ができる法テラスに電話してみるのも良い方法です。
※法テラスの記事はこちらを参考にしてみてください
→法テラスとは?お金がなくても弁護士に相談・依頼できる公的サービス
逆に養育費を支払いたくない方へ
次に、どうしても養育費を支払いたくない、あるいはこのまま継続して支払い続けるのは厳しい方はどうすれば減額、免除してもらえるかということを見てみましょう。
離婚公正証書を作成していない、あるいはまだ調停を行っていない場合は、養育費を支払わなくてもすぐに給料を差し押さえられたりすることはありません。
平成18年の調査でも
「養育費の取り決めをしていない」が58.3%
「養育費の取り決めをしている」のうち「文書無し」が35.2%存在しています。
また、離婚公正証書を作成していても養育費は必要ないと一度決めてしまっている場合、先述の通り請求し直すには時間や手間がかかるため、受け取ることを諦める方は意外と多いようです。
先述の通り、養育費は生活保持義務のため、ちょっと生活が苦しい程度では支払いを拒否することはできない義務ですが、離婚公正証書を作成しておらず、調停や裁判が行われていなければ支払わずに済むかもしれません。
また、強制執行を受けることになったとしても、
- 減給あるいは退職している
- 自己破産している
- 生活保護を受けている
上記等の理由に養育費請求調停を申し立て、減額や免除を求めることができます。
養育費請求調停の流れは、支払ってもらうためのものと同じように準備、進行していきます。
ただし、最初に述べた通り、養育費は子供のために支払われるべき費用ということを忘れないでください。
本当にお子さんのことを考えてからその結論を出しましたか?
感情的になって元パートナーへの支払いを拒否しているだけではありませんか?
一度しっかりと考えてみましょう。
ここまでのまとめ
養育費は金銭に関わる問題なので、どうしてもシビアな対応をしてしまいがちなことが養育費未払い問題の根本にあると思います。
しかし、本当に子供のことを思えば、受け取る側も支払う側も、感情的になって受け取りを拒否することや、養育費の未払いなんてことはできないはずです。
金銭を抜きにして考えてみると、お子さんが健やかに育つためにもできるだけ不自由をさせたくないと思いませんか?
それが金銭に置き換わっただけです。
離婚をしただけでも子供には大きな負担をかけることを忘れずに。
子供のことを第一に考えて行動をすることが離婚してしまっても両親の責任だと考え、養育費問題に取り組みましょう。